劇場版 カバさんのミシン

uncycloNana_shiのらくがき帳

おはなしその1 らっこちゃんと大きな石

(6歳の姪っ子のために即興でつくって喋ってぜんぜんウケなかったお話をいくつかここに残しておきます。悲しいので。)

 

らっこちゃんはおなかに平らな石をのっけて、そこへ貝をぶつけて割って食べます。そのための大事な石を、らっこちゃんはある日なくしてしまいました。朝の体操でバンザイをしたひょうしに海の中へ落っことしてしまったのです。らっこちゃんはとても悲しみました。でもそのままではごはんが食べられないのでがんばって代わりの石を探していると、大きな灰色の石がぷかぷか浮いているのを見つけました。へんな模様があってデコボコして、貝を割るのにちょうどよさそうでした。おなかに石をのせるとぺたりとくっついて、ちょっとやそっとのことでは落ちませんでした。「やあ、これは便利だ。」

らっこちゃんはお昼に大きな貝をつかまえて、おなかの石で上手に割りました。そしてらっこちゃんが貝の中身に手をのばす前に、お腹の石からニュッと首が伸びて、貝の中身をきれいに平らげてしまいました。じつはらっこちゃんが拾った石は石ではなくてカメさんだったのです。カメさんの首の動きはとてもすばやくて、らっこちゃんはのんびりしていたので、石がほんとはカメさんなのも、ごはんを横取りされてしまったのにも、らっこちゃんは全然気づきませんでした。「この貝、手で持ったときにはずっしりしていたのに、空っぽだったのか、ざんねんだなあ」らっこちゃんはため息をついて貝がらを海に捨て、次の貝を探しました。ようやく見つけた次の貝も、あっという間にカメさんに食べられてしまいました。らっこちゃんはまた何にも気づきませんでした。

 

こんなことがずっと続きました。

 

むかしは貝をいっぱい食べてよく太って大きかったらっこちゃんでしたが、だんだんやせて縮んでいきました。反対におなかの石、つまりカメさんは大きく重くなっていきました。らっこちゃんはもうふらふらでした。ある日のこと、ついにおなかの石の重みにたえきれなくなって、らっこちゃんは石を海に捨てようと思いました。でも石はぴったりおなかにくっついてとれません。らっこちゃんが今にも海に沈みそうになったそのとき、カメさんの首がニュッと伸びて、大きな頭についた大きなお目目がらっこちゃんを見ました。そして大きな口を開けて、らっこちゃんをぱくりと一口で飲み込んでしまいました。らっこちゃんは今カメさんのおなかの中で、カメさんが食べたお魚やなにかをちょっと分けてもらって暮らしています。(おわり)